マイナ保険証の利用解除が増加 – 何が起きているのか?
2025年2月18日、厚生労働省は1月のマイナ保険証の利用登録解除申請が1万3212件に達したと発表した。
昨年10月下旬から解除申請の受付が始まり、累計で5万8426件に上っている。
これは、国民の一定数がマイナ保険証の利用に対して不安や不満を持ち、意図的に利用をやめていることを示している。
この現象は単なる「デジタル化への抵抗」として片付けるのは短絡的。
むしろ、この大量の解除申請は、日本の行政・医療分野におけるデジタル改革の現状と課題を浮き彫りにする重要なデータと言えるだろう。
では、なぜここまで利用解除が増えているのか?
まず、マイナ保険証とは何なのか、そして政府が推進する背景について整理していく。
マイナ保険証とは?その目的と導入の背景
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マイナ保険証とは
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として利用できる制度。
従来の紙やプラスチック製の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化することで、医療のデジタル化を促進することを目的としている。
主な機能と特徴について以下にまとめる。
・医療機関での受付がスムーズになる
保険証の提示が不要になり、顔認証や暗証番号で本人確認が可能になる。
・診療情報の一元化
過去の診療履歴、薬の処方履歴、健康診断の結果などが統合され、医師が正確な医療判断を下しやすくなる。
・オンライン資格確認
保険資格の有無がリアルタイムで確認可能となり、資格喪失者の不正利用を防止できる。
・医療費の適正化
診療履歴の共有によって重複受診を減らし、医療費削減につながると期待されている。
政府の狙い – デジタル化推進の背景
マイナ保険証の導入は、政府のデジタルガバメント戦略の一環として推進された。
背景には、以下のような目的がある。
- 医療DXの推進
日本の医療業界は、紙ベースの事務作業が多く、データ連携が遅れているという課題を持っている。
マイナ保険証を普及させることで、電子カルテとの連携を強化し、データドリブンな医療を実現する狙いがある。 - 行政コストの削減
従来の健康保険証は、毎年数億枚単位で発行されていて、印刷や郵送にかかるコストが膨大だった。
マイナ保険証の普及によって、これらのコストを削減し、財政負担を軽減する目的がある。 - 保険証の不正利用防止
従来の健康保険証は、顔写真がないから、第三者によるなりすましや不正利用のリスクが指摘されていた。
マイナンバーカードを活用することで、より厳格な本人確認が可能になり、不正利用の抑制が期待されている。 - マイナンバーカードの普及促進
日本では、デジタル化を進める上で、国民一人一人に固有のIDを持たせることが不可欠とされている。
しかし、マイナンバーカードの取得率は2022年時点で約50%程度にとどまっていて、政府は取得率を高めるための施策を続けてきた。
マイナ保険証の導入は、「マイナンバーカードを生活の必須ツールにする」ための戦略の一環ともいえる。
なぜ利用解除が増加しているのか?
政府の狙いとは裏腹に、多くの国民がマイナ保険証の利用をやめる選択をしている。
では、その理由を具体的に分析してみよう。
- 情報漏洩・システムトラブルへの不安
マイナ保険証の運用開始後、ご登録や情報漏洩の問題が相次いだ。
たとえば、別人の情報が紐づけられるトラブルやマイナンバーカードのデータが誤った他人に閲覧される事例などが挙げられる。
このような事態が繰り返されることで、「個人情報が守られないのでは?」という不信感が強まり、多くの人が利用を解除する要因となっている。 - 高齢者・デジタル弱者への負担
特に高齢者やデジタル機器になれていない人にとって、マイナ保険証の導入は以下のような点で使いづらさを伴う。
・暗証番号の入力が必要
・顔認証の不具合
・医療機関によって対応が異なる
「紙の保険証の方がシンプルで安心」という意見が根強く、結果として利用解除の流れが加速している。 - すべての医療機関で対応しているわけでは無い
一部の医療機関ではマイナ保険証に対応していないことも問題。
せっかく登録しても利用できる施設が限られているから、従来の健康保険証と併用しなければならず、「使い勝手が悪い」と感じる人が多い。 - 強制的なデジタル化に対する反発
政府は2024年12月までに従来の健康保険証を廃止すると発表している。
しかし、「なぜ強制的にデジタル化するのか?」という疑問を持つ人も少なくない。
特に、強制的な変更は国民の自主性を尊重しない施策として批判の対象になっている。
マイナ保険証は、政府のデジタル戦略の一環として導入された制度だが、情報漏洩リスクや利便性の問題から利用解除が増加している。
デジタル化の推進自体は重要と考えるが、それを国民にとって本当に使いやすい形での実現ができているのか、という点が問われている。
今後、政府がどのようにシステムの安定性向上や利用者の不安解消に取り組むかが、マイナ保険証の普及を左右するカギとなるだろう。
マイナ保険証の利用解除が増加する理由
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情報漏洩・セキュリティリスクへの不安
マイナ保険証の運用が開始されて以降、システムの不具合や誤登録、個人情報漏洩のリスクが頻繁に報道されている。
これが、利用者の不安を煽り、利用解除申請の増加につながっている。
過去に発生した問題の事例として以下を挙げる。
・2023年6月
他人の医療情報と誤って紐づけられるケースが多発。本人ではない第三者の診療履歴や処方履歴が表示されるトラブルが報告された。
・2024年1月
一部医療機関でのシステム障害により、マイナ保険証の認証ができなくなる事例。一部の病院で受付ができず、従来の健康保険証を提示しなければならないケースが発生。
このような問題が「マイナ保険証の安全性は本当に確保されているのか?」という疑念を生み、利用者の不安を増大させている。
強制的なデジタル化への反発
マイナ保険証の導入は政府主導のデジタル改革の一環だが、「デジタル化を国民に強制している」という印象が強く、反発の声も大きくなっている。
政府は2024年12月をもって、現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化することを決定した。
しかし、これに対し、多くの国民が以下のような懸念を抱いている。
・「デジタルに不慣れな人には負担が大きい」
・「従来の健康保険証のまま使いたいのに、なぜ選択肢を失くすのか?」
・「カードを紛失したら、医療機関を受診できなくなるのでは?」
このような声が背景にあり、「義務化に反対する意思表示」として利用解除を洗濯する人も増えている。
利便性の問題
政府は「マイナ保険証は利便性が向上する」と主張しているが、実際には「従来の健康保険証の方が使いやすい」と感じる人が多いのが現状。
マイナ保険証の使いにくい点について以下にまとめる。
・認証に手間がかかる
顔認証または暗証番号が必要で、従来の健康保険証より受付時間が長くなることもある。
・対応していない医療機関がある
マイナ保険証を導入していない病院や診療所では、結局従来の健康保険証が必要になる。
・トラブル発生時の対応が難しい
システム障害が起きた際、従来の保険証が無いと受診が難しくなる。
これらの要因が重なり、「わざわざマイナ保険証にする必要がない」と判断する人が増えている。
今後の課題と対策
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システムの安定化とセキュリティ強化
現在の最大の問題点は「システムの信頼性が低い」という点。
誤登録や情報漏洩、認証エラーが発生する限り、利用者は不安を感じ続ける。
必要な対策として以下を挙げる。
・システムテストの徹底強化
事前のテスト不足が原因で不具合が多発しているから、厳格な検証を実施。
・情報漏洩対策の強化
個人情報の取り扱いを厳格化し、万が一のセキュリティ事故に備えた補償制度を整備。
・サポート体制の拡充
何か問題が発生した際、すぐに対応できる窓口を増やし、迅速な対応を可能にする。
高齢者・デジタル弱者への配慮
政府は「マイナ保険証の導入により、医療機関の利便性が向上する」としているが、それはデジタル機器になれた層にとっての限定的な話。
高齢者やデジタルが苦手な人には、大きな負担となる可能性がある。
必要な対策として以下を挙げる。
・「デジタル機器が苦手な人向けの簡単な認証方法」を導入
たとえば、暗証番号を使わずに認証できる方法を検討。
・紙の保険証の継続利用を可能にする措置
全てをデジタル化するのではなく、一定の選択肢を残す。
・窓口対応の強化
高齢者向けの相談窓口を設置し、困ったときにすぐにサポートを受けられる環境を整備。
国民の理解を深めるための情報発信
現状では、政府の説明不足も問題となっている。
マイナ保険証のメリットや、具体的な仕組みについての説明が不十分と感じるため、不安が広がっていると考える。
必要な対策を以下にまとめる。
・具体的なメリットを明確にする広報活動
たとえば「どのような医療機関でどんな便利な使い方ができるのか?」を具体的に示す。
・システムトラブルが発生した際の補償制度を整備し、公表する
「万が一の時も安心」と思わせる仕組みを作る。
・全国の医療機関への周知徹底
一部の病院で導入が進んでいない現状を改善し、全国で統一的に利用できる環境を整備。
結論
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マイナ保険証の利用解除が増加している背景には、「セキュリティへの不安」や「強制的なデジタル化への反発」があることが分かる。
政府はデジタル化を進めるだけでなく、国民が安心して利用できる環境を整えることが不可欠。
今後の課題としては大きく三つある。
・システムの安定化とセキュリティ対策の強化
・高齢者やデジタル弱者への配慮
・十分な情報発信と国民への説明責任
これらが求められている。
デジタル化が進む中で「利便性と安全性の両立」が最大のテーマとなるだろう。
政府の今後の対応が、マイナ保険証の普及を左右するカギとなる。
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